「ふかうら雪人参」の誕生秘話
〜すべては偶然の大雪からはじまった〜
約10年前の晩秋、「にんじん」の掘り取り作業を行うため、舮作(へなし)興農組合代表の坂本さんは、大勢の作業員を頼みました。
しかし、その当日は大雪に見舞われました。
「どうしようか・・・」
一人、坂本さんは、畑に立ち尽くしました。
「この雪さえなければ・・・」
昭和51年、坂本さんは、農業だけで生きる道を目指した漁師仲間と集まって舮作(へなし)興農組合を作りました。
日本海に面する海岸段丘の丘陵を切り開き「だいこん」栽培を手始めに、試行錯誤を繰り返しながら、幾度となく危機を乗り越えて、これまでなんとか経営を拡大してきました。
今回ばかりはもうダメかという思いで、なかばやけくそで雪をかき分け、手塩に育てた「にんじん」を掘り上げてみると、
「にんじんが凍っていない。むしろ紅色が鮮やかだ」
早速、事務所に持ち帰り、食べてみると、「にんじん」独特のえぐみや匂いが少なく、これまでに食べたことのない甘く美味しい「にんじん」がそこにありました。
これが、「ふかうら雪人参」誕生の秘話です。
この地域以上に最低気温が低いと「にんじん」は凍ってしまい、温度が高いとこの味を引き出すことはできません。この地域以上に雪が積もると掘り取りが困難になるし、雪がないとこの味を引き出すことはできません。
「ふかうら雪人参」の栽培は、この地に適していました。
この偶然の出来事をきっかけに、坂本さんの「ふかうら雪人参」づくりへの挑戦が始まります。
厳しい寒さの中での農作業は決して楽ではありませんが、農閑期に出稼ぎに行くことを考えれば、冬にこの地で働く場所を作ることで、家族が一緒に暮らすことができる。
そういう思いが、坂本さんの「ふかうら雪人参」づくりへの思いを一層強くさせました。
「自然はやっぱりすごい。生命は強いものだ。あの時は本当に雪が憎らしく思えたが、今は感謝している。あの人参を掘っていなければ今の自分は無いだろう・・・。 雪人参に負けないように自分も強く生ぎでいがねば・・・。」
坂本さんの飾りっけのない言葉には、この地に深く根をおろし、厳しい自然と向き合って生きてきた人間がもつ、自然への畏敬の念とこの地で生きることへの頑固なまでの強い信念が溢れています。
そんな思いがあったからこそ、坂本さんは、「ふかうら雪人参」という白神の贈り物を受け取ることができたのだと思います。